「中国で働く北朝鮮の労働者が今年に入って、ストライキを起こしている」。中国東北部にいる事情に詳しい関係者から、そんな情報が入ってきた。
北朝鮮の外貨稼ぎのために中国に派遣された労働者たちは、厳しい管理下に置かれてきた。ストライキが事実なら驚くべき事態だ。何が起きているのかを確かめるため、中国と北朝鮮の国境地帯に向かった。遼寧省と吉林省の関係者に当たると、少しずつ状況が見えてきた。
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北朝鮮にとって、国外の労働者がもたらす外貨は貴重な収入となっている。核やミサイル開発の資金源になるのを防ごうと、国連安全保障理事会は2017年12月の制裁決議で、北朝鮮の国外労働者を19年12月までに帰国させるよう加盟国に義務づけた。
だが、今も中国には多くの労働者が残る。北朝鮮は制裁に引っかからないように、労働者を就労ではなく研修などの名目で送り出しているとされる。中国の会社にとっては、中国人より割安で雇えるメリットがある。
これまでの中国東北部での取材で知りえたところでは、衣料品の製造や水産加工などの工場で働く北朝鮮人労働者の多くは女性だ。集団で寮に住み、数年間、仕事場との間を往復する日々を送る。休日に数人で連れだって出かけることはあるが、行動の自由があるわけではない。北朝鮮で生まれ育った労働者たちはそんな環境でもまじめに働き、管理にはおとなしく従ってきた。
事情を知る複数の関係者によると、工場によって差はあるが北朝鮮人労働者の賃金は月2500元(1元=約21円)程度。北朝鮮の会社や当局側に多くを奪われ、600~700元ほどが労働者本人の取り分となる。賃金の大半は北朝鮮に戻った後に労働者に渡される。ふだん何か買いたいものがある時に、現場の管理責任者から数百元を受け取るようなことはあるものの、大きなお金を手元におくことはないという。
工場関係者が語った経緯は
そんな労働者たちがストライキを起こしたというのか。事実だとすれば、なぜか。中国の工場関係者から以下のような話を聞くことができた。
3月中旬以降、遼寧省丹東市…